研究課題/領域番号 |
18390075
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大池 正宏 九州大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (70271103)
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研究分担者 |
竹内 弘 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教 (70304813)
平川 雅和 九州大学, 大学院・医学研究院, 研究員 (20380454)
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キーワード | 血管内皮細胞 / 機械刺激 / アクチン / ヘパラン硫酸プロテオグリカン / RhoA / インテグリンα5β1 / TGFβ1 |
研究概要 |
血管内皮細胞は機械的な刺激を感知してその生理機能を果たしている。本研究は、内皮細胞が機械刺激を感知する分子機構を明らかにすることを目的とした。本年度は以下の結果を得た。ウシ大動脈内皮細胞(BAEC)のヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)をヘパリナーゼIIIで分解し、低浸透圧刺激を与えた。共焦点レーザー顕微鏡で測定した細胞の膨化縮小能にはヘパリナーゼ処理後にも変化がなかったが、機械刺激に対するFAKリン酸化等の全ての即時反応が消失した。また、TGFβ_1で処理して形態が変化したBAECでも機械刺激による反応が見られなかったことから、細胞形態そのものが機械刺激受容メカニズムの一部である可能性が示唆された。さらに、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用い、剪断力刺激の感知に関わるという報告があるPECEM-1のmRNA発現をsiRNAで抑制し、低浸透圧刺激を与えた。ヘパリナーゼ処理や前年度の抗インテグリン抗体処理の場合とは異なり、PECAM-1の発現を抑制しても低浸透圧刺激に対するアクチン重合は抑制されず、HUVECにおける低浸透圧の感知にPECAM-1は関与していないと考えられた。以上の結果より、インテグリンα5β1とHSPGが血管内皮細胞の低浸透圧刺激感知機構に関与し、これは過去に報告されたPECAM-1を中心とした剪断力感知機構とは異なるものであることが明らかとなった。即ち、血管内皮細胞の自律的機能調節に重要な機械刺激感知機構の分子構築は単一ではないことが本研究により明らかになった。一方で、血管内皮細胞機能の持つ病態生理的意義から考えると、これら複数の分子構築が関わることは、今後治療標的として機械刺激感知機構を捉える上で有用な特徴であると考えられた。
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