研究概要 |
線虫ライブラリーから発現クローニングを行ったドーパ受容体候補分子CO6H5.7は、ドーパ自体をリガンドとせず、水溶性物質3,4-dihydroxybenzaldehydeおよびその類似構造体数種をリガンドとすることを突き止めた。線虫は、1000種類以上の化学物質により誘引あるいは忌避行動を惹起される3,4-dihydroxybenzaldehydeの構造類自体benzaldehydeは従来忌避および誘引物質の二相性作用を惹起する物質として報告されてきた。今回、CO6H5.7の遺伝子欠損体を単離し、行動解析を行ったところ、このbenzaldehydeに対する忌避応答が減弱していることを発見した。ドーパ受容体のクローニングからスタートした研究ではあったが、この発見は重要である。なぜなら、これまでに化学感覚受容体の候補として数百にのぼる7回膜貫通構造を有するタンパク質が報告されているが、diacetylに対し誘引応答を惹起するOdr-10が、リガンドが同定された唯一のGタンパク質受容体であり、今回の発見は全く新しい手法によりリガンドー受容体の関係が明らかとなった最初の例として位置づけられるからである(Neuronへ投稿予定)。一方、麻酔下ラット孤束核への微量注入時に惹起される血圧下降応答を指標として、ドーパ以外の活性画分が得られている。Fab-Mass, NMR解析により複数の候補分子を絞りつっある。また海馬初代培養神経細胞系においてドーパがカルシウム応答を惹起するかいなか、およびグルタミン酸応答に対する修飾作用を示すか否かを検討したところ、無作用濃度のドーパがグルタミン酸応答を抑制する傾向を示すことを確認した。
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