前年度に引き続きでアルツハイマー病(ア病)の神経細胞死に関するTGFβ2仮説の検証とア病関連の神経細胞死を抑制するヒューマニン(HN)の細胞膜受容体を中心としたシグナル伝達系の詳細を明らかにする研究を遂行した。また、HNの誘導体Colivelinの前臨床試験を遂行した。 1.TGFbeta2説の検証 TGFbeta2発現がア病根患者の残存大脳皮質神経細胞内で増強していることを示した。2.TGFbeta2説におけるPS1の役割解明 TGFbeta2/APP/JNK/NADPH oxidase/caspasesア病関連細胞死シグナル伝達系とPS1の機能を結ぶ分子として同定したPOSHとMOCAの機能解析を行った。本年はまず、両者がTGFbeta2誘導性細胞死に必須であることを示した。3.HN受容体の基本性格の解明HN受容体を構成するリコンビナント蛋白質を作成し、in vitroでHN存在下に3量体形成が生じることを発見した5.HN受容体欠損マウスとFAD遺伝子高発現マウス交配による脳萎縮を伴うア病モデルマウスの作成 引き続きWSX-1-/-マウスと我々が独自に樹立した変異PS1ノックインマウスを交配したマウスを作成中である。6.内因性HN HN様分子の同定 前年に引き続きマウス組織からに内在性HN様分子の構造を決定しつつある。2次元電気泳動により4kDと10kDの蛋白質を精製することに成功した。7.受容体を刺激する神経細胞死抑制小分子のスクジーニング、昨年発見したLT-20が二つのアッセイによりHN様活性を有することを確認し、さらにlibrary sizeを広げ幾つかのより低い濃度でHN作用を示す有力なリードコンパウンド小分子を同定した。8.臨床応用をめざしたHNの前臨床試験 最も必要とされていたトランスジェーニックア病動物モデルでの治療効果を確認することに成功した。
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