LOX-1の動脈硬化形成機転におけるin vivoでの意義、及び、虚血心筋におけるLOX-1の病態生理的意義を検証するために、LOX-1欠損(LOXKO)マウスを作成し、種々の解析を加えた。 LOX-1欠損マウスは、LOX-1遺伝子のリガンド結合部位をターゲットし、常法に従い作成した。このマウスを用いて内皮依存性の弛緩反応に及ぼす酸化LDLの影響をin vitroで解析すると、野生型マウスでは、酸化LDLにより内皮依存性拡張反応が抑制されたが、LOX-1欠損マウスでは抑制されなかった。 また、LDLRKOマウスとの交配により、LDLR/LOX-1ダブルノックアウト(LDLR/LOX-1KO)マウスを作成した。LDLRKOマウスの大動脈壁に著明な脂質沈着を認めたが、LDLR/LOX-1KOマウスでは、脂質沈着が有意に抑制されていた。また大動脈の内膜肥厚も、LDLRKOマウスに比べてLDLR/LOX-1KOマウスでは抑制されていた。興味深いことに、LDLR/LOX-1KOマウスでは、LDLRKOマウスに比べて、NFkB、CD68の発現の抑制、p38MAPKの活性化の抑制が認められた。これらの所見は、LDLR/LOX-1KOマウスでは、レドックス感受性情報伝達機構の抑制により、動脈硬化の進展が抑制されていることを示唆するものである。 さらに、心筋虚血における検討では、左冠動脈を結紮後に再灌流させる虚血再灌流モデルを用い解析した。野生型マウスでは、虚血再灌流後に、左室収縮能の低下を認めたが、LOXKOマウスでは、虚血再灌流後心機能は保たれ、同時に心筋壊死巣は有意に減少していた。 これらの結果から、LOX-1血管内皮機能障害および、それに引き続くと考えられている動脈硬化、また、動脈硬化の結果として起こる心筋梗塞の悪化に寄与していることが明らかとなった。
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