研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、G2Aと呼ばれるGタンパク質共役受容体の生理機能を明らかにすると共に病態との関連を解明し、新たな診断・治療法を確立するための基礎的な研究を行うことにある。G2Aは、リノール酸やアラキドン酸の酸化物である9-HODEや11-HETEなどの遊離酸化脂肪酸をリガンドとする受容体で、様々なDNA損傷刺激によって誘導され、リガンド刺激によって細胞周期の停止を引き起こすことが知られていたが、その生理機能は不明であった。皮膚の表皮角化細胞は、常に紫外線や酸素、炎症等による酸化ストレスに曝されている。我々は、表皮角化細胞にG2Aが発現していることを、RT-PCRや、免疫組織化学的手法を用いて明らかにした。さらに表皮角化培養細胞を紫外線照射や過酸化水素で刺激すると、酸化ストレスの指標が上昇すると共に、G2Aが誘導された。また、9-HODE刺激によって、表皮角化培養細胞の細胞周期は停止し、強い増殖抑制が生じることを、FACscan解析やBrdUの取り込み実験によって明らかにした。この増殖抑制は、細胞の形態異常を伴っており、同時に炎症性のサイトカインの産生増加が観察された。また、これらの変化はもう一つのリノール酸由来の酸化脂肪酸である13-HODEでは観察されなかった。RNA干渉によってG2Aの発現を減少させると、これらの効果は減弱した。さらに、リノール酸を添加した表皮角化培養細胞に酸化ストレスを加えると、リン脂質に組み込まれたリノール酸が、9-HODEに変換されることをLC/MSを用いた定量系を用いて明らかにした。本研究によって、皮膚の表皮角化細胞において、酸化ストレスによって生じる9-HODEがG2Aを介して炎症像の形成に関与している可能性が示された。
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