本研究では、神経伝達と細胞接着、細胞増殖という3つの細胞機能の制御に関してRabファミリー低分子量G蛋白質の作用機構に焦点を絞って解析し、各々の機能のシグナル伝達の時間的・空間的制御を明らかにすることを試みた。神経伝達については、Rab3Aの不活性化に働く活性制御蛋白質Rab3 GAP p130のノックアウトマウスを作製して解析を行った。このマウスの脳内では活性型Rab3Aが著明に増加しており、その結果、神経伝達物質の放出が抑制されるとともにシナプス可塑性に異常を示すことが明らかになった。細胞接着については、これまで私どもが見出したRab13-JRAB系がタイトジャンクション(TJ)の接着分子occludinの細胞膜への輸送を制御することを明らかにしていたが、本研究ではRab13-JRAB系がTJの今ひとつの接着分子claudinの輸送にも関与することを示した。さらに、JRABはRab13以外にRab8とも結合し、Rab8-JRAB系は、アドヘレンスジャンクションの接着分子E-cadherinの細胞膜への輸送に関与することも明らかにした。一方、これまでにJRABがアクチン細胞骨格系に沿って局在することを示していたが、本研究で、JRABがアクチン結合蛋白質のひとつであるアクチニン4と直接結合することを示した。また、JRABはアクチニン4と結合することによって細胞膜にリクルートされて接着分子の輸送に機能することを示した。細胞増殖については、私どもが見出したRab7の標的蛋白質Rabring7がそのユビキチン化活性を介してEGF受容体の分解に関与することを明らかにした。このように、本研究は順調に進展し、当初の目的はほぼ達成できた。
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