1)樹状細胞におけるロイコトリエンB4受容体BLT1の役割 マウス樹状細胞にBLT1の発現が認められた。骨髄由来の樹状細胞(BMDC)はLTB4に対して、ベル型の走化曲線を有する走化性を示したが、この走化性はBLT1欠損マウスの樹状細胞で消失していたため、BLT1を介しているものと考えられた。ヒト単球由来樹状細胞にもBLT1が発現していた。BMDCの培養上清中のサイトカイン産生を定量したところ、BLT1欠損BMDCではIL-12の産生が低下しており、混合リンパ球培養試験におけるT細胞の活性化が、BLT1欠損樹状細胞を用いた場合に減弱していた。また、外来抗原感作・惹起による遅延型過敏反応がBLT1で大きく減弱していた。以上から、樹状細胞に発現するBLT1はTh1型の免疫反応を亢進させる役割を有していることが示唆された。 2)BLT1のGタンパク質共役部位の同定 BLT1受容体はGiとG16という薬理学的に異なる三量体Gタンパク質を活性化することが知られているが、BLT1のどのドメインが両者を区別しているのかは明らかではなかった。BLT1のGタンパク質共役部位を同定する目的で、BLT1の細胞内ループの4アミノ酸を一単位として、全てアラニンに置換した変異受容体を合計14個作成し、おのおのの変異型受容体の細胞内シグナル伝達を観察した。第三細胞内ループのアミノ末端に存在するi3-1に変異を加えたBLT1は、G16を正常に活性化するが、Giは全く活性化出来ず、この部位でGiタンパク質を認識していることが明らかとなった。i3-1変異型BLT1は細胞内カルシウム上昇は正常であるが、アデニル酸シクラーゼの抑制とLTB4に対する細胞走化性を消失しており、Giタンパク質の活性化ができないことを裏付けている。興味深いことにGiを活陛化出来ない変異BLT1は、高親和性のLTB4結合能を失っており、Giタンパク質との共役によって高親和性の構造をとることが明らかとなった。
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