血清アミロイドP成分(SAP)は、種々のアミロイドーシスで沈着するアミロイドに共通して存在し、アミロイド形成を促進することが示唆されている。そこでSAPがアミロイド形成に果たす役割を明確にできれば、アミロイドーシスの予防法の開発を促進できる可能性があると考えられる。そこで、独自に作成した無Sapマウスと脳に限局してAβアミロイドが沈着するアルツハイマー病のモデルマウス(Tg2576)及び全身諸臓器にアポリポ蛋白質AIIアミロイド(AApoAII)が沈着する老化アミロイドーシスモデルマウスを用い、Sapがこれらアミロイド沈着にどう影響するかを検討した。 この結果、8〜25ヶ月齢のSap^<-/->/Tg2576と対照Sap^<+/->/Tg2576、各38匹の脳内Aβ沈着程度に差異を認めなかった。本結果は、Aβ沈着にSapが関与しないか、血液脳関門により、Sapの脳実質への移行が阻止されていることを示唆する。一方、11ヶ月齢のSap^<-/->老化アミロイドーシスモデルマウス11匹と対照Sap^<+/->老化アミロイドーシスモデルマウス9匹における全身のAApoAII沈着程度は、共に軽度で差異を認めなかった。また、17〜18ヶ月齢のSap^<-/->/老化アミロイドーシスモデルマウス17匹と対照Sap^<+/->老化アミロイドーシスモデルマウス13匹における全身のAApoAII沈着程度は、11ヶ月齢より増加していたが、2群間に差異を認めなかった。本実験では、マウスにAApoAIIアミロイド線維核を投与して、AApoAII沈着を誘導した。従って本結果は、アミロイド線維核形成後のAApoAII線維形成機構にSapが関与していないことを示唆する。今後、線維核を投与しない実験系での解析が必要である。
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