研究課題
一度損傷を負った神経の再生は不可能ではないことが近年判ってきた。しかし実際の再生は極めて難しい。損傷に際してセマフォリンやコンドロイチン硫酸(CS)などの抑制分子が誘導され、reactive astrocytesの集積によるグリア性瘢痕とあいまって神経軸索再生を阻害する。残念ながらこれらの抑制機構の解明は十分でなく、故に実際に神経再生医療の現状は理想に程遠い。本研究はプロテオグリカンの長大な糖鎖であるグリコサミノグリカン(GAG)に新規の決定的な神経学的機能を与え、当該分野の研究を強力に推進することを意図している。我々は平成18年度N-acetylglucosamine 6-O-sulfotransferase(GlcNAc6ST)-1のmRNAが胎生期マウス脳の視床に発現すること、さらにGlcNAc6ST-1が脳ケラタン硫酸(KS)の生合成とグリア性瘢痕形成に重要な役割を果たすことを、大脳刺傷モデルを用いて明らかにした。本年度はこのような現象が神経学的にも意味のあるものかを検討する目的でマウスの脊髄損傷モデルを作成した。マウス脊髄に圧迫性の損傷(圧挫モデル)を与え、神経機能の回復を見たところ、GlcNAc6ST-1欠損マウスの機能回復が有意に早く、その度合いが大きいことが判明した。KSの発現は受傷後7日をピークに損傷部位周辺に誘導され、GlcNAc6ST-1欠損マウスのグリア性瘢痕形成は弱く、神経軸索再生は促進されていた。以上より、KSの神経軸索再生阻害作用は神経学的にも重要なものであることが強く示唆された。
すべて 2009 2008 2007
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件)
Brain Res. (In press)
Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol 296
ページ: H462-469
J. Vas. Surg. 47
ページ: 1322-1329