研究課題/領域番号 |
18390103
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
谷澤 幸生 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00217142)
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研究分担者 |
湯尻 俊昭 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (80346551)
植田 浩平 山口大学, 保健管理センター, 講師 (50325221)
鶴 政俊 山口大学, 医学部附属病院, 助手 (20379960)
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キーワード | 糖尿病 / Wolfram症候群 / 小胞体ストレス / インスリン分泌 / インスリン抵抗性 / ノックアウトマウス |
研究概要 |
"Genetically programmed β-cell death"によるインスリン欠乏型糖尿病と視神経萎縮を主徴とする常染色体劣性遺伝性疾患Wolfram syndromeの原因遺伝子、WFS1を欠損するwfs1欠損マウスは、膵β細胞障害モデルとして特異である。β細胞障害の発現はマウスの遺伝的背景に依存し、C57BL/6Jを遺伝的背景とするwfs1欠損マウス(C57BL/6J-wfs1^<-/->)の耐糖能異常は軽度にとどまる。一方、過食のため軽度の肥満とインスリン抵抗性、耐糖能異常をきたすが随時血糖値はほとんど上昇しないyellow agoutiマウス(C57BL/6J-A^y/a)との交配により作出したwfs1欠損agoutiマウス(wfs1^<-/> A^y/a^-)では生後16週頃から全個体でインスリン分泌不全による著明な高血糖を来した。膵ラ氏島ではアポトーシスによりβ細胞が選択的に消失した。単離ラ氏島のウエスタン解析では、Bip蛋白の発現が野生型マウスと比較し、agoutiマウスやwfs1欠損マウスで増加していたが、Wfs1欠損agoutiマウスではさらに増加していた。肥満によるインスリン抵抗性存在下でもβ細胞にはERストレスが惹起される。wfs1欠損マウスのβ細胞はERストレスに脆弱であり、肥満によりさらにβ細胞にERストレスが負荷されると、容易にアポトーシスに陥ることが示唆された。興味深いことに、インスリン抵抗性改善薬であるpioglitazoneの投与により、wfs1欠損agoutiマウスでのβ細胞のアポトーシスは回避され、糖尿病発症はほぼ完全に抑制された。この時、pioglitazone投与によるラ氏島でのBip蛋白の発現減少はアポトーシスの抑制に比較して顕著でなく、pioglitazoneによるβ細胞保護効果はインスリン抵抗性の改善によるβ細胞でのERストレスの軽減のみでなく、β細胞への直接作用が存在する可能性も示唆された。
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