研究課題/領域番号 |
18390107
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
押村 光雄 鳥取大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20111619)
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研究分担者 |
加藤 基伸 鳥取大学, 医学部, 助手 (00273904)
香月 康宏 鳥取大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (90403401)
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キーワード | ヒト人工染色体 / 遺伝子治療 / 筋ジストロフィー / 染色体工学 / 間葉系幹細胞 / ES細胞 |
研究概要 |
デュシャンヌ型筋ジストロフィー(DMD)はヒトX番染色体上に存在するDMD遺伝子の機能欠損により引き起こされる進行性筋萎縮症である。DMD遺伝子は全長2.4Mbにも及ぶことからDMDの完全な遺伝子治療は現時点では不可能であった。これまでに我々は巨大な遺伝子を染色体レベルで搭載可能なヒト人工染色体(HAC)ベクターの開発を行ってきた。本研究においてDMD遺伝子をクローニングしたヒト人工染色体ベクターと自己の幹細胞を用いたex vivo細胞遺伝子治療を目指して以下の研究を行った。 3MbにおよぶDMDゲノム領域を染色体改変技術を利用した染色体転座型クローニング法でHACベクター上にクローニングした。具体的にはヒトX染色体上に存在するDMD遺伝子のテロメア側を人工テロメア配列移入により切断し、セントロメア側にloxP配列を導入した。改変X染色体をHAC導入CHO細胞へMMCT法を用いて移入後、Creを一過性に発現させることでHAC上のloxPサイトにDMDゲノム領域を転座クローニングした。なお、上記の部位特異的染色体改変は相同組み換え頻度の高いトリDT40細胞にヒトX染色体を移入して効率的に行った。 次に作製したDMD-HACが機能的に発現するかを確認するためマウスES細胞に導入した。FISH法によりDMD-HACが導入されたマウスES細胞株を選別し、そのES細胞を8細胞期胚にインジェクション後、仮親に移植することでキメラマウスを作製した。DMD-HAC上にはあらかじめGFPを搭載していることから、DMD-HAC保持状況を蛍光顕微鏡で観察したところ、90%以上の割合で蛍光を観察する個体が10個体あたり2個体観察された。 近年、ヒト重症免疫不全の遺伝子治療がウィルスベクターで行われたがベクターの宿主染色体への挿入による癌(白血病)が頻発したことが報告されている。そこで安全な遺伝子治療を目指して、HAC導入細胞を選択的に除去するシステムを構築した。具体的にはHACベクター上に自殺遺伝子(HSV-tk)を搭載し、そのHACベクターを導入したヒトHT1080細胞をヌードマウスに移植した。ガンシクロビル皮下投与によるHAC除去効果を検討したところ溶媒投与群に比べ優位に腫瘍形成が抑制された。このことからHACベクター導入により万が一がんが引き起こされた場合でもHAC導入細胞を選択的に除去できることが示された。 今後はDMD-HACがヒトと同様の組織特異的発現様式を保っていることをRT-PCR法と免疫組織化学染色にて確認する。さらにDMD-HACを筋ジストロフィーモデルマウス由来の間葉系幹細胞に導入し、モデルマウス個体に戻すことにより、ヒトへの応用を目指した遺伝子治療モデル系を構築する。
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