研究概要 |
(I)TCRシグナル伝達系の活性化状態の解析 (1)下記のATLにおけるゲノム異常解析から,ATL細胞においてCD28遺伝子の増幅が高頻度に認められることが明らかになり,ATL細胞におけるmRNA及びCD28蛋白質の発現レベルの解析,siRNAを用いたCD28のknock-downによるシグナル伝達および細胞増殖への影響を検討中である。(2)NF-kB活性化に至る経路:ATL及びポジキンリンパ腫でNIKの過剰発現がNF-kBの活性化に関与していることを明らかにした。 (II)臨床材料を用いた解析: (1)ATLで過剰発現を示す8個の遺伝子からなるRT-PCRアレイの系を確立してその測定値から「ATL型発現スコア」を定義した。キャリアではその値がばらつき,一部の検体で高い値を示すが,感染細胞数には依存しないこと等が示され,感染細胞の質的変化を反映している可能性が示された。現在,このスコアがATL発症高危険群の同定に応用出来るかどうかをJSPFAD検体で検討中である。発現解析はAgilentの系で追試中である。対照群は年齢をATL患者集団と一致させた21検体とし,PBMCからCD4細胞を濃縮して解析した。現在までに26検体の解析が済んでいる。過剰発現遺伝子群は,従来のアレイ解析データと多くが共通していた。(2)GeneChip500KとCNAGのシステムで,ATL細胞におけるゲノムコピー数異常の解析を行った。これまでにリンパ腫型を含む170検体についてデータを得た。多彩な増幅と欠損が染色体の限られた領域で認められることがATLの特徴であることが示された。増幅と欠損の領域にはT細胞で高発現を示す遺伝子,T細胞のシグナル伝達や細胞増殖に関与する遺伝子が多数認められ,現在約120の候補遺伝子リストが出来ている。今後は,これらの遺伝子異常の機能的意義の解析を進める予定である。
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