コンドロイチン硫酸E(CS-E)は高度に硫酸化されたユニークなグリコサミノグリカン鎖であり、その生合成はN-アセチルガラクトサミン4硫酸6-O-硫酸転移酵素(GalNAc4S-6ST)によって触媒される。CS-Eはそれ自体の持つ高度な陰性荷電、あるいはmidkine等のヘパリン結合性増殖因子と結合することで様々な生理作用を示すことが判明しているが、神経膠腫におけるCS-Eの発現意義は明らかにされていない。本研究の目的は神経膠腫細胞の増殖・浸潤におけるCS-Eの役割を明らかにすることである。平成18年度は最初に5年間の予後情報が得られている37症例の神経膠腫(毛様細胞性星細胞腫2例、びまん性星細胞腫5例、退形成性星細胞腫9例、膠芽腫15例、退形成性乏突起膠腫3例、上衣腫3例)のホルマリン固定パラフィン包埋切片からtotal RNAを抽出、DNase処理後に逆転写酵素にてcDNAを合成し、定量PCR法にてGalNAc4S-6STの発現量を測定した。81%の症例で腫瘍部におけるGalNAc4S-6STの発現レベルは正常大脳皮質に比べて低値を示し、またGalNAc4S-6STの正常大脳皮質に対する腫瘍部の相対的な発現レベルのカットオフ値を0.1582と定義すると、0.1582より高値の症例は低値の症例に比べて5年予後が有意に不良であった(P=0.0295)。次に、GalNAc4S-6ST mRNAが神経膠腫細胞で発現しているか否かを確認するため、GalNAc4S-6ST mRNAの発現が最も高かった症例に対してin situ hybridization法にてGalNAc4S-6ST mRNAの組織局在を解析し、GalNAc4S-6ST mRNAが腫瘍細胞で発現していることを確認した。以上の結果より、GalNAc4S-6STは神経膠腫で発現しており、その予後不良因子となり得ることが示された。
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