研究概要 |
本研究計画では,「生理的、病的血管新生プロセス」というキー・ワードを中心に据え,動物モデルとヒト疾患との融合的解析を試みた。特に生理的、病的血管新生時に,多段階的に下流関連遺伝子群発現が誘導されるというこれまでの成績を,さらに分子種を広げて詳細な検討を加えた。本年度の研究成果として,以下の点が明らかになった。 (1)FGF-2依存性血管新生の血流再開作用に炎症性ケモカインMCP-1が重要であり,間葉系細胞においてPKC,NF-kB系により制御されている(Arterioscler Thromb Vasc BioI 2007)。 (2)内因性サイトカインシグナル阻害分子Spred-1およびSpred-2のdoubleknockoutマウスでは,胎生期13.5日頃より多量の出血を来たして胎生致死となる。これにはVEGF-Cシグナル伝達の過剰亢進と,それによるリンパ管の分化異常が原因である(MolCellBiol2007)。 (3)FGF-2依存性血管新生の血流再開作用に内因性胎盤増殖因子(PIGF)発現が必須であり,これはVEGF-Aシグナルを補完的に制御することにより発動されている(Atherosclerosis2007)。 (4)FGF-2過剰発現はVEGF-Cの発現を増強し,リンパ管新生を促進すると共に,誘導されたVEGF-CはPDGF-Bの発現を増強し,新生毛細血管の構築に関与する(投稿中) (5)糖尿病性血管障害をスタチン系薬剤は抑制するが,それにはPDGF-BB/周皮細胞は関与せず,内皮におけるNOS系の活性化が重要である(投稿中)。このように各種病態において血管新生過程における重要な分子メカニズムが明らかになった。(714字)
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