マウスC型レクチンは微生物認識だけでなく、接着分子として細胞の移動に関与することなどが明らかになっている。また、単独であるいは他の分子との会合することにより細胞内にシグナルを伝え、細胞の機能の制御に関わることも明らかになっている。そこで、細胞内にITIMモチーフを有するDCIR1に着目して、特異的単クローン抗体を樹立し、その発現や機能を検討した。 その結果、樹状細胞以外にも好中球や単球に高い発現が認められ、それらは主に細胞内に検出されるが、炎症応答により新たな蛋白合成を介することなく細胞表面へと輸送されることが示された。同様の実験をヒトの細胞でも検討するため、ヒトDCIR1の発現についても市販の抗体を用いて検討した。ヒト白血病細胞株HL-60細胞からDMS0やレチノイン酸を用いて好中球様細胞への分化誘導を行ったところ、分化前のHL-60では細胞内にhDCIRの存在が確認されたが、表出されていなかった。ところが、好中球への分化が進むにつれてhDCIRが細胞表面に発現されてくることが確認された。しかし、IFN-g刺激により単球様に分化させた細胞には、その発現は認められなかった。DCIR1はEPNモチーフを揺することから、マンノース/フコースを認識することが考慮される。そこで、四量体を作製してzymosanやheat-killedあるいは生菌のC. albicansへ結合することを確認した。また、細胞内シグナル伝達に関しては、トランスフェクタントを用いて実験を行い、刺激によりmDCIR1のリン酸化が誘導され、この時SHP-1およびSHP-2を結合していることが明らかになった。 以上の結果より、菌体認識においてmDCIR1はその細胞内ITIMを介して、細胞応答の制御に働く可能性が示唆された。
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