IRF-2遺伝子欠損マウスではウイルス感染や合成二重鎖RNAの腹腔内投与によって急性出血性膵炎が生じる。合成二重鎖RNA腹腔内投与後のIRF-2遺伝子欠損マウスの脾臓においてIL-22、IL-17の発現が増加していることを見出した。放射線照射したIRF-2遺伝子欠損マウスにIRF-2ヘテロマウスの骨髄を移植する骨髄移植実験において、急性膵炎が合成二重鎖RNAを腹腔内投与にて再現されたが、逆の組み合わせでは再現出来なかった。これらの結果は、IRF-2遺伝子欠損マウスでは膵臓組織の障害が膵炎の一次的な原因である可能性を推測させる。現在さらに、IRF-2と、IRF-1、TNF-R、Rag2などのダブルノックアウトマウスを作成し、合成二重鎖RNA誘発性急性膵炎における他の因子との関与の検討を進めているところである。In vitroの系においては、マウス膵外分泌腺由来細胞株266-6で、siRNAにてIRF-2をノックダウンさせ、合成二重鎖RNAやサイトカインとの相互作用の解析をおこなっている。また、266-6細胞よりcDNAライブラリーを作成し、two-hybrid法にてIRF-2と会合する因子の同定を行い、IRF-2のメチル化に関与する可能性の遺伝子を同定したところである。また膵炎に関与するサイトカインであるIL-22の作用にはSTAT3の活性化が重要であることを証明し、更にIRF-2遺伝子欠損マウスの脾臓では合成二重鎖RNAによるSTAT3のDNA結合能やNF-kBのDNA結合能にも違いが認められた。またIL-22RのKOマウスの作成のためのES細胞スクリーニングも進行中であり、現在まで約8000個のコロニーから2個の陽性クローンを見いだしたがランダム挿入も同時におこっていたためコンストラクトの作成からやり直しているところである。
|