研究概要 |
黄色ブドウ球菌敗血症でのstaphopainsの作用を解析する前段階として、staphopainsの欠損株を作製し、培養液による凝固・線溶に対する作用を調べた。staphopain Aを欠損させた株(scpAB)の培養液では、内因系凝固反応を反映する活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の短縮作用が消失したが、線溶活性を表すトロンビン時間(TT)の延長はみられた。 一方、staphopain Bを欠損させた株(sspBC)の培養液では、scpABと同様にAPTTの短縮作用はみられなかったが、TT延長作用は認められた。 以上の結果から、staphopainsの欠損による凝固・線溶作用への影響がうかがわれ、黄色ブドウ球菌敗血症モデルでstaphopainsの役割をin vivoで探索するための基礎データが得られた。また、StaphopainのAとBの配列から、得られた1CV8と1PXVのX線解析のデータを参考にホモロジーモデリングをStaphopainのAとBの配列情報を利用して、作製した立体構造モデルに基づき、活性中心の鍵穴に当てはまる化学物質を30万個程度の試薬リストからドッキング計算より選定したところ、A阻害薬候補としてO-HYDROXY ATORVASTATIN, MONOSODIUM SALT等、B阻害剤候補としてN-{2{(methylsulfonyl)amino]ethyl}-2,5-bis(2,2,2-trifluoroethoxy)benzenecarboxamide等各々100種類が明らかとなった。 これにより、各物質のstaphopains抑制活性を調べ、強力な数種を選別して敗血症モデル動物に投与して治療効果を検討する準備が整った。
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