Staphopain AとBのアミノ酸配列と同じシステインプロテアーであるパパインとの類似性をもとにしてコンピュータによる立体構造モデルを作製し、それぞれの活性部位に適合する既知の物質を各々40種類と90種類選出、購入した。まず、0.1M Tris-HCl、pH7.6、150mM NaClで希釈してstaphopain A5 nM、あるいはstaphopain B10nMの溶液を作製し、阻害剤候補物質を10μMになるように添加し、167μMの蛍光基質Z-Leu-Leu-Glu-MCAとZ-Phe-Arg-MCAをそれぞれのstaphopainに使って阻害候補物質の活性抑制効果を蛍光分光光度計でスクリーニングした。結果として、staphopain AとBに対する抑制効果がみられた阻害剤候補物質はそれぞれ3種類と4種類であった。これらの阻害剤候補物質の阻害定数Ki値を同じ基質とバッファーを使って求めたところ、Ki値は数μMから数10μMで、阻害剤として充分使えるKi値であった。また、その抑制パターンはすべてが拮抗阻害であったことから、これらの阻害物質はin vivoでも両staphopainの阻害剤として有効である可能性が示唆された。 今後は、これらの阻害剤がstaphopainsの血漿タンパク質への作用(キニン産生やフィブリノーゲン分解など)に対する抑制効果を確認するとともに、阻害剤としての効果をより高めるための化学修飾を試みる。さらに、生体に投与し黄色ブドウ球菌感染症治療薬として応用することが最終目的であるので、半減期を含めた生体内での動態解析、および安全性の評価も必要であろう。
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