研究概要 |
黄色ブドウ球菌感染症の新たな治療開発の戦略として、その病原因子であるプロテアーゼstaphopainAおよびBの抑制剤を探索した。同じシステインプロテアーゼであるパパインとの構造類似性とstaphopainのアミノ酸配列の情報をもとにコンピュータで作製した立体構造モデルを使って、それぞれの活性部位に適合する既知の化合物を各々40種類と90種類選出した。その中からstaphopainAとBに対する抑制効果がみられた阻害剤候補化合物各3種類と4種類の情報をコンピュータにinputしてさらに抑制活性の強い可能性のある化合物を選出し、それぞれのリストの上位から入手可能な14と9種類を調べた。0.1M Tfis-HCI, pH7.6,150mM NaC1で希釈したA20nMに対し化合物2μM、あるいはB10nMに対し10μMになるように添加した。抑制効果は各staphopainが167μMの蛍光基質Z-Leu-Leu-Glu-MCAとZ-Phe-Arg-MCAをそれぞれ水解する活性で測定した。Aに対して13種類が抑制効果を示し、最も強力であった化合物#11は拮抗阻害でそのKi値1.3μMは前段階で選出された化合物のKi値7〜数10μMより良い結果が得られた。A病原作用である血管漏出作用に対して、#11は3μMで1/3までに抑制し20μMではほぼ完全に消失させたことから、in vivo応用への可能性が得られた。一方、Bの方では5種類で抑制がみられたもののKi値は数10μMで、前段階より抑制効果の強い化合物は得られなかった。今後は阻害剤としての効果をより高めるための化学修飾を試みる。さらに、生体に投与し黄色ブドウ球菌感染症治療薬として応用することが最終目的であるので、半減期を含めた生体内での動態解析、および安全性の評価も必要であろう。
|