研究課題
基盤研究(B)
本研究は、網羅的な遺伝子の発現解析および逆遺伝学的手法を用いた機能解析の手法により、スポロゾイトの肝臓感染の分子基盤を解明し、スポロゾイトを標的とする新たなマラリア感染阻止法を開発することを目的として行った。本報告書に論文として収めた成果を以下に要約する。(1)スポロゾイトが肝臓に感染するためには、「細胞通過」能が決定的な役割を果たしていることを明らかにした。すなわち、「細胞通過」はスポロゾイトが皮膚の内部を通過し循環系に入る過程、類洞壁を越えて肝類洞から肝実質へ侵入する過程でそれぞれ重要な役割を果たしていることを見出した。(2)肝実質に侵入したスポロゾイトは次に肝実質細胞に寄生する。この肝実質細胞の特異的認識に関わる原虫蛋白質の存在を初めて明らかにした。(3)マラリア原虫スポロゾイトとオオキネートの宿主侵入には相同性の高い(または同一の)蛋白質が関与し、両ステージの宿主侵入機構が極めて類似することを明らかにした。スポロゾイトがいかにして肝臓に到達し、さらに肝実質細胞に特異的に感染できるのか、その機構はほとんどわかっていなかった。この原因は、本課題にアプローチする有効な方法が存在しなかったことにあった。本研究では逆遺伝学的手法を用いることにより、肝臓感染に関わる多数の原虫分子とその機能を解明することができた。さらに蚊の吸血から肝臓感染に至るまでの感染経路を明らかにした。今後これらの成果をもとに新たな感染阻止法の可能性を探りたい。
すべて 2008
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Cell Host Microbe 3
ページ: 88-96
ページ: 86-96