研究課題
マラリアは何度でも感染し、防御免疫が容易に成立しない。この現象にはマラリア原虫の抗原多型が深く関わる。マラリア原虫における抗原多型の分子進化に関して以下の知見を得た。1.熱帯熱マラリア原虫のワクチン候補免疫標的抗原であるメロゾイト表面タンパク質の遺伝子(msp1)多型をマラリア伝播度の高いアフリカと低い東南アジア・西太平洋の原虫集団について比較した。PCRタイピングに基づく感染多重度の決定、及び、DNAシーケンスの集団遺伝学的解析の結果、伝播度の高いタンザニアではmsp1対立遺伝子多様度は高く、遺伝子内多型サイトの連鎖不平衡は低かったが、東南アジア・西太平洋では伝播度と遺伝的多様度、連鎖不平衡の度合いは必ずしも相関しなかった。この相関のなさの要因は地域によって異なり、自家受精の程度、及び、クロロキン耐性の分布の関与が示唆された。2.進化的に比較的最近、ヒト寄生性となったとされる三日熱マラリア原虫における抗原多型を、それと近縁な関連マカク類サルマラリア原虫であるP. cynomolgiにおける抗原多型と比較検討した。その結果、両方の原虫種に共有される多型はあまり認められず、msp1多型は種の分岐後に誕生したことが示唆された。3.抗原多型の分子進化の特徴を解明する基礎とするため、マラリア原虫種の系統関係について調べた。ヒト、チンパンジー、マカク類サル、齧歯類、鳥類に寄生するマラリア原虫各種について、細胞質リボソーム小亜粒子RNA(SSUrRNA)遺伝子について分子系統解析を行った。最尤法による系統樹から、マラリア原虫類は次の4つのグループに大別されることが判明した。(1)マカク類サルマラリア原虫と三日熱マラリア原虫、(2)齧歯類マラリア原虫、(3)卵形マラリア原虫、及び(4)熱帯熱マラリア原虫を含めたその他のマラリア原虫。さらに、SタイプのSSUrRNAの系統解析から、マカク類マラリア原虫では、P. fieldiとP. simiovale、P. hylobatiとP. inuiが姉妹関係にあること、P. gonderiの分岐が初期に起こったことが明らかとなった。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (6件)
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