研究概要 |
病原微生物として主として腸炎ビブリオ(VPと略記)を取り上げ、このVPに対して抑制ないし増殖作用を示す生体側因子を探索する系を確立した。ダルベッコーMEMを用い、CO_2インキュベーターで培養し、pHインジケータとしてレサズリンを用いる系を確立した。レサズリンは通常用いるフェニールレッドより判定しやすく菌数とも一定の相関が得られる等で優れている事が分かった。この系を用いて増殖因子・抑制因子を探索する過程で、培地に加える血清量で結果が大きく異なる事が分かった。一定濃度の牛血清の添加で抑制活性が認められた。この抑制活性は成牛血清、新生児期牛血清で認め、胎児期血清では認められず、胎児期牛血清では逆に増殖促進活性を認めた。そこでまず、成牛血清あるいは新生児血清に認めた腸炎ビブリオの抑制因子の単離を試みた。各種カラム(ゲルろ過、イオン交換樹脂、FPLC)クロマトグラフィーを組み合わせて精製したところ、トランスフェリンとヘモペキシンが精製された。これらのいずれが抑制因子の本体かは検討中である。促進因子の精製も検討中であるが、精製に至っていない。今のところ分子量3,000以下であり、ペプチド性の因子であると想定している。これらの因子は、腸炎ビブリオの増殖・阻害には関与するが、神奈川現象陽性・陰性菌を問わずに見られた。しかし他の菌種ではこのような現象を認めないか、極めて弱いものであり、腸炎ビブリオにかなり特徴的なものである可能性が考えられた。
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