研究概要 |
腸管出血性大腸菌/腸管病原性大腸菌の下痢発症は、III型分泌装置を介して宿主に移行するエフェクターの相乗作用によって誘導される。近年になってエフェクターの網羅的解析が行われ、39種のエフェクター候補が同定された(Tobe T.et al.,PNAS:103,14941-14946,2006)。申請者らはエフェクター特異的シャペロン、ならびにIS近傍に位置する遺伝子に着目し、コンピューター解析にて、50個のエフェクター候補を推定した。これら候補については各々クローニングを行い、blaMとの融合遺伝子を作製後、EHEC O157堺株に導入した。エフェクター遺伝子がBlaMと融合すると、菌体内の融合産物はIII型分泌装置を介して、菌体外に分泌される。すなわち培養上清から分泌タンパク質を調整し、坑Bla抗体にてウエスタン法を行うことでエフェクターの探索が可能となる。その結果、ECs3485,ECs0847,ECs3885,ECs0876,ECs1560,ECs3487,ECs1568の各クローンが、III型分泌装置依存的に分泌されることを明らかにしたが、これら7クローンは先に戸邉らが報告したエフェクター候補中に存在していた。 同定したエフェクター候補については、エフェクターと相互作用する宿主側因子をバクテリアのtwo-hybrid法にて同定する。現在、既知エフェクターを対照として、条件を検討している段階である。エフェクターとの相互作用が示唆された宿主側因子については、siRNAを用いて宿主側因子の発現をノックダウンさせた培養細胞にEHECを感染させ、感染後の細胞骨格因子の再構成・破壊の形態学的解析、細胞間バリアー機能の解析を行うことで、感染におけるエフェクターの役割について、分子細胞生物学的に理解する。
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