研究課題/領域番号 |
18390137
|
研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
後藤 直正 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (30121560)
|
研究分担者 |
小川 倫洋 京都薬科大学, 薬学部, 助手 (00411033)
福島 淳 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教授 (00181256)
|
キーワード | 日和見感染症 / 血液感染 / 緑膿菌 / セラチア / 排出システム / クォーラム・センシング / エキソトキシン / ゲノム |
研究概要 |
当該年度は、血液環境下で発現する緑膿菌およびセラチアの遺伝子群の検索をゲノムレベルで行うことを目標として研究を行い、次の成果を得た。 1.緑膿菌のヒト血液内防御因子への作用 (1)緑膿菌の病原因子であるエラスターゼ、アルカリプロテアーゼ、エキソトキシン、および膜小胞について感染時の発現制御と病原性への寄与の解析を行なっている。今年度は重要な病原因子と考えられる膜小胞の定量系を確立した。さらに、膜小胞の試験管内での産生について調べたところ、Quorum sensing(QS)すなわち細胞間情報伝達機構により制御されていることがわかった。これらのことから、膜小胞は他のQS制御下病原因子と同様に感染部位で発現し、自然免疫を撹乱している可能性が強く示唆された。 (2)緑膿菌ゲノムにコードされた排出システムがQS発現因子の選別に働いていることが明らかとなった。これは、排出システムが緑膿菌の病原因子発現に関与するメカニズムを明確にする端緒となると期待される。 (3)臨床分離緑膿菌のMLST分子系統解析から、多剤耐性緑膿菌には明らかな系統が存在することを示した。 2.セラチアのヒト血液内防御因子への作用 (1)セラチアゲノム・マイクロアレイを用いた臨床分離株の比較ゲノム解析から、セラチアのメタロプロテアーゼであるセラリシンが血液環境下での生育に重要な因子であることを、白血球減少マウスおよびカイコ感染モデルを用いて明らかにした。 緑膿菌およびセラチアのTn挿入変異株バンクの構築はほぼ終了した。これらのバンクを利用してヒト血液に抵抗性に関与する遺伝子群を明らかにし、両菌種の血液感染における病原性発現機構を明らかにすることを行っている。また、臨床材料中に存在する他菌種とのクロストークの機構を実験的に示すことを計画している。
|