研究課題
基盤研究(B)
グラム陰性日和見感染症起因菌である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびセラチア菌(Serracia marcescens)によるヒト自然免疫機構への抵抗性の解析を行い、次の結果を得た。1)緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa):acyl-HSL誘導体によるエラスターゼ合成遺伝子(lasB)およびラムノリピッド合成遺伝子(rhlA)の発現を比較したところ、緑膿菌が産生するacyl-HSLでの発現が最も高かった。mexBの欠失はC8〜14の3-oxo-Cn-HSLに応答したlasBの発現を異なる割合で増加させた。各遺伝子の発現とピオシアニンやエラスターゼの産生量の変化は一致した。以上の結果から、緑膿菌では、MexAB-OprMが多剤耐性に関与しているだけではなく、応答すべきacyl-HSLsを選別し、QSを制御し、ヒトに対する病原性の発現に寄与していることが明らかとなった。2)セラチア菌(Serracia marcescens):約8,000クローンのTn挿入変異株ライブラリーを構築し、全てのクローンについて血清感受性試験を行った結果、79個の血清感受性変異株が得られた。得られた変異株におけるTn挿入遺伝子を解析したところ、リポ多糖体のコア領域やO抗原の合成に関する遺伝子の変異株が顕著な血清感受性を示すことがわかった。このことより細胞表面の構造変化が血清に対する抵抗性に重要であることが示唆された。また、これら変異株の菌体表面の構造変化を解析したところ、ヒト自然免疫因子のひとつである補体とリポ多糖(lipopolysaccharide)との結合性が抵抗性に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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