研究概要 |
プロトタイプのサル・ヒト細胞指向性HIV-1DT(NL-DT5R,PNAS誌103:16959-16964,2006)を出発材料として、HIV-1種特異的増殖の分子機構の解明を目指し様々な変異ウイルスクローンを構築した。サル細胞で多段増殖が可能になるために必要なシクロフィリンA結合領域あるいはVifに関するこれらの部位特異的点変異体のウイルス学的および生化学的性格を検討した。HIV-1 Vifの生物活性に関しては、APOBEC3Gおよび3Fとの結合能についても解析した。本年度の具体的な成果は以下のごとくである。 1.NL-DT5Rから作製した17種類のシクロフィリンA結合領域変異体のサルHSC-F細胞での増殖能およびウイルス粒子へのシクロフィリンAの取り込み量を調べた。シクロフィリンAのウイルス粒子内の存在量とウイルス増殖能には明確な相関がなかった。また、HSC-F細胞でのウイルス増殖にはシクロフィリンA結合領域中の-アミノ酸(87番)が非常に重要であることが明らかとなった。 2.SIVmac由来配列を少なくし、かつ、サルAPOBEC3Gを不活化できるVifを持つクローンの作製に成功したが、HSC-F細胞では多段増殖しなかった。したがって、他のAPOBEC蛋白質もHSC-F細胞での増殖に重要であると考えられる。 3.種々のHIV-1Vif点変異体を構築し、それらのAPOBEC3Gおよび3Fとの結合能をIP Western法で調べた。HIV-1Vifと3Gあるいは3Fとの結合領域は異なることが明らかとなった(論文投稿準備中)。 これらの成績を基に、現在、HIV-1の種特異的増殖に関わる他の細胞因子(TRIM5αやAPOBEC3F等のAPOBEC蛋白質)について詳しく解析しサル細胞でのウイルス複製に最適化されたHIV-1の構築を目指している。
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