哺乳動物のインフルエンザA型ウイルスは、カモなどの野生水鳥の腸内ウイルスに由来することが明らかになっているが、どのような分子機構によりインフルエンザウイルスが異種動物間で宿主域を越えて感染伝播し、病毒性を獲得することができるのか完全には解明されていない。本研究は、アジアかぜ、香港かぜ、あるいはスペインかぜのヒトパンデミックウイルス株や高病原性トリインフルエンザウイルス株NAの性質が、新型インフルエンザウイルスの出現や伝播にどのように関与しているのかを明らかにすることを目的とする。そこで、本年度はインフルエンザウイルス感染細胞に誘導されるアポトーシスやサイトカイン産生等の細胞応答にendosomeやlysosome内のウイルスシアリダーゼ活性が、どのように関与しているのかを分子レベルで解明するため、1)トリインフルエンザウイルスと同様にシアリダーゼ活性のlow-pHを保持するA/Hong kong/1/68(H3N2)株のNA遺伝子と部位特異的変異法により2箇所(344番目と466番目)のアミノ酸部位を変異させることでシアリダーゼ活性のlow-pHを消失させたNA遺伝子を用いてバキュロウイルス発現系による可溶性NA糖タンパク質を作製した。さらに、2)1918年(スペインかぜ)のパンデミックウイルスも1957年(アジアかぜ)と1968年(香港かぜ)のパンデミックウイルスと同様に、シアリダーゼ活性のlow-pH安定性を保持しているのかを明らかにするために、ペインかぜウイルスNA遺伝子のcDNA遺伝子を用いてNAの細胞発現ベクターを構築した。
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