研究概要 |
平成18年度の研究計画に従い、TatとNF-κBによるHIVの転写制御機構を追究した。まず、HIVのTatとTAR, P-TEFbからなる複合体立体構造を計算化学の手法により予測した。その後、TARやCuclin T1との接触部位のアミノ酸残基の変異体を作成し、実際に活性を失うことを確認したところである(論文準備中)。また、遺伝子発現プロフィール解析を実施し、Tatが酸化ストレスDNA傷害に対する修復酵素であるOGG1を転写誘導することを明らかにした。TatはOGG1の転写を負に調節するAP-4に作用し、TatはAP-4と結合し、OGG1プロモーターからAP-4を引き離すことによってその転写を促進することが分かった。OGG1をノックダウンするとHIV感染によるDNAの酸化修飾の結果8-OH-dGが多量につくられるが、TatがOGG1を誘導することによってその蓄積が抑制されることを示し、Tatはfeed-forwardのメカニズムによりOGG1を産生し、HIVゲノムの変異を未然に防いでいることがわかった[Imai, K.et al.: J.Biol.Chem.280:126701-26713,2005.]。さらに、AP-4はHIV潜伏感染細胞のHIVプロウイルスのTATAボックス近くに結合し、しかもHDACをリクルートすることによってHIV転写を著明に抑制し、NF-κB活性化により直ちに遊離することを明らかにした[Imai, K : J.Biol.Chem.,281:12495-125]6,2006.]。他方、NF-κB相互作用分子については、そのp65サブユニットの中央部分やC末部分と結合する蛋白の遺伝子クローニングを進め、すでに報告した6種類の蛋白とは別の蛋白を見出し、現在そのうちの2種類を詳細に調べている。
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