研究概要 |
HIVの複製の律速段階は転写の段階であるので、主に宿主細胞中の転写因子、NF-kBとAP-4、によるそれぞれ転写活性化と転写抑制(潜伏感染)の分子機構を追求した。(1)NF-kBは誘導型転写因子であり、種々の細胞内シグナル伝達分子による活性制御を受けている。我々は、NF-kBを構成し転写活性化ドメインを持つp65サブユニット蛋白と相互作用する宿主因子を酵母two-hybrid screeningにて遺伝子クローニングを行ない、今年度は第7番目の因子としてAKIP1を同定した(J Biol Chem 283: 7834-43, 2008)。核内因子AKIP1はp65およびPKAcと結合し、PKAcによるp65のSer276リン酸化を促進してその転写活性化能を高め、p65の核内移行を著しく促進することを見出した。(2)Noraristeromycin(NAR)は、NF-kB活性化に必要なIKKαを特異的に阻害することによって細胞内に慢性潜伏感染するHIVの複製を抑制することを見出した(論文投稿中)。(3)TatによるHIV-1転写活性化機構を分子および原子レベルで解明するために、計算化学の各手法を用いてTat-TAR-Cyclin T1の分子複合体の立体構造を予測し、相互作用を阻害する化合物がTat作用を部分的に抑制することを初めて見出した(投稿準備中)。
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