研究概要 |
EBV溶解感染を誘導すると宿主細胞内ではEBVゲノムは100倍から1000倍増幅複製される。このウイルスDNA合成を宿主細胞はDNA損傷即ち異常DNAとみなしATM依存的DNA損傷チェックポイント経路を活性化すること(Kudoh A et al.J.Biol.Chem.280:8156-8163.2005)、この現象は単純ヘルペスウイルス感染でも同じ現象がおきることを報告して来た(Shirata N, et al.J.Biol.Chem.280:30336-30341.2005)。しかしATM依存的DNA損傷チェックポイント経路の活性化はp53の活性化をおこすが、p53及びp53の下流のP21、MDM2の発現量の増加はなく、p53の下流の経路は活性化されていなかった。これはウイルスBZLF1蛋白質がp53の機能をブロックすることで細胞周期停止や細胞死の誘導をおさえていること、またその分子機構はBZLF1蛋白質存在下ではp53はプロテアソーム依存的に分解されるのでp53の下流にシグナルが伝達されないことを明らかにした(投稿中)。 これまでEBV溶解感染を誘導した細胞はS期様環境を維持したまま宿主DNA複製が抑制され細胞周期停止を引き起こすことを明らかにしてきた(Kudoh et al.J.Virol.77:851-861.2003,Kudoh et al.J Virol.。78:104-115.2004)。その分子機構の一つの機序として溶解感染を誘導すると染色体複製開始及び複製伸長に関与するCDK2特異的リン酸化部位(Thr-19,Thr-110)がリン酸化されることが判明した。EBV溶解感染誘導はCDK2活性の高い環境になり、CDK2がMCM4のリン酸化を行っていると思われるが、さらにこのリン酸化はEBVBGLF4蛋白質キナーゼによってin vitroでもHeLa細胞での単独発現系でも起きることを明らかにした。MCM4-6-7から構成される6量体の持つDNAヘリカーゼ活性はBGLF4蛋白質共存在化では著しく抑制されることから、EBV溶解感染期にはCDK2およびBGLF4蛋白質がMCM複合体をリン酸化しMCM複合体のヘリカーゼ活性を不活化することが、宿主染色体DNAの再複製開始および複製伸長を阻害する一つの機構であることが示唆された(Kudoh et al.J.Virol.80:10064-10072.2006)。 ウイルスの複製の場にミスマッチ修復に関与する蛋白質群が集積することを明らかにし。ウイルスゲノム合成にミスマッチ修復の関与を示唆した(Daikoku et al.J.Biol.Chem.281:11422-11430.2006)。
|