【目的】炎症反応は病原体に対する生体防御のみならず、血管新生や創傷治癒など生体の恒常性維持に重要な役割を果たす。さらに、自己免疫疾患やアレルギー疾患、粥状動脈硬化など多くの疾患発症にも関与する。従って、炎症制御機構の解明は免疫学において最も重要な研究課題のひとつである。本研究では、マウスモデルを用いた自己免疫/アレルギー/炎症性疾患発症におけるCD4陽性エフェクターT細胞の関与について、特にその制御分子と考えられるOX40の機能に焦点を当てて、その制御機構の解明を目指す。 【本年度の結果】OX40シグナルはCD4陽性T細胞の恒常性維持に関与し、種々の炎症反応の惹起と遷延化を促進することが知られる。CD4陽性T細胞の移入実験により、OX40シグナルが記憶T細胞の一種である、エフェクター記憶T細胞生存促進に必須であることが明らかになった。他方、セントラル記憶T細胞の生存と機能にはOX40シグナルが必要でないことが分かり、OX40がCD4陽性エフェクター記憶T細胞恒常性維持に選択的に関与することが判明した。 他方、OX40L遺伝子導入マウスがC57BL/6系統依存的に炎症性腸疾患を自然発症することから、感受性系統と抵抗性系統の交配マウスを用いた遺伝子連鎖解析を行い、炎症性腸疾患感受性候補遺伝子IBDX(仮名)を見出した。IBDX mRNA発現は疾患感受性系統(C57BL/6)において疾患抵抗性系統に比べて3分の1に減弱していた。OX40過剰シグナルとC57BL/6系統におけるIBDX機能不全が同時に作用することが、腸管炎症と密接に関連していると推察される。IBDXがT細胞に発現することから、IBDXによる炎症性T細胞機能制御機構の存在を想定して研究を進行中である。
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