研究概要 |
抗結核剤服用の肺結核患者100例において副作用(肝障害・皮疹・薬剤熱)の有無を調査した。治療期間中に18例患者に肝障害を,25例に皮疹を,そして15例に薬剤熱を認めた。副作用発現患者群と非発現患者群間で患者背景や臨床所見の比較を行った。肝障害を起こした結核患者は同時に皮疹や薬剤熱も伴いやすかった。イソニアジドの代謝過程で生じる肝毒性代謝物の蓄積による肝障害以外にアレルギーの関与が示唆された。 次に,抗結核剤の薬物代謝や解毒酵素であるNAT2,CYP2E1,GSTA1,GSTM1,GSTP1,GSTT1の6つの遺伝子多型と副作用発現との相関解析を行った。NAT2多型でNAT2^*6A haplotypeをもつ患者は肝障害を起こしやすかった(P=0.001,odds ratio(OR)=3.535)。逆に,NAT2^*4 haplotypeをもつ患者は肝障害を起こしにくかった(P<0.001,OR=0.265)。NAT2-*7B haplotypeをもつ患者は薬剤熱を合併しやすかった(P=0.018,OR=3.391)。また,GSTP1多型のrs76803 SNPで変異型A alleleをもつ患者は肝障害や薬剤熱を合併しやすかった(それぞれP=0.033とP=0.038)。 酸化ストレスに関連しているNrf2,Keap1,HMOX1,BACH1の4つの遺伝子多型と副作用発現との相関解析も行った。Bach1多型のT21884C SNPで変異型C alleleのホモ接合体(C/C genotype)の患者は肝障害を起こしやすかった(P=0.0178)。 さらに,候補遺伝子アプローチ法を用いて抗結核剤の副作用感受性遺伝子を同定し,最終的には遺伝子診断法を確立する予定である。
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