我々はSendai virusベクターの本体であるribonucleoprotein(RNP)を遣伝子導入用ベクターとしての利用方法を検討してきた。luciferase、GFP及びLacZ遺伝子を搭載した非伝播型SeVベクターを構築し、これらベクター感染細胞から精製したRNPを実験に使用した。先ず、ベクター感染細胞から高濃度のRNPを調製するために生産及び精製条件を検討し、RNPの大量調製が可能になった。また、RNP溶液へ安定化剤を添加することで保存性が増し、更に凍結乾燥による保存も可能であることを示した。各種遺伝子導入試薬によるin vitroでのRNPの導入試験の結果、DOTAP及びDOSPERのカチオン性脂質で効率よく導入できることがわかった。また、サイトカラシンB及びクロロキン添加実験からRNPの細胞内の導入経路はファゴサイトーシスにょるものと考えられた。一方、in vivoでは筋肉にRNPが導入できることがわかり、RNP/DOTAP複合体よりもむしろRNP単独で導入効率が向上することが示された。ラット前頸骨筋へのRNP単独投与において初回及び2回日投与後に遺伝子発現が確認され、RNPの反復投与の可能性が示された。このときの血清中にSeVに対する抗体価が増加し、RNPが細胞内に導入され発現していることが強く示唆された。また、SeV中和抗体が存在する中で照Pの反復投与が可能であったことは研究目的として当初に掲げたRNPベクターの概念を満足するものであった。更に、導入効率を上げるために筋肉をbupivacain処理すると顕著に導入効率が上がり、筋繊維細胞で発現していることが示された。また、物理的導入方法としてソノポレーションを行ったところ、筋肉以外の皮下、耳、あるいは足裏でも導入が可能であることが示された。このように本実験を通して新規遺伝子導入ベクターとしてのRNPの有用性を示すことができた。
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