研究概要 |
我々はこれまでの研究で、深部静脈血栓症を発症する多くの日本人の患者は、主要な凝固制御系であるProtein S・Protein C凝固阻止活性が低下していることを見出した(Tsuda, et. al.:Ann Clin Biochem 36,423-432(1999)他)。この活性低下は欧米白人の約5-10倍の頻度で起こっている。その後、アジア各地の研究で、中国、台湾、タイなどでもProtein S・Protein C凝固阻止活性低下が高頻度に見られることが報告され、我々の研究結果はアジア人に広く当てはまるのではないかと考えられるようになった。そこで、JSPS Asian Core Programの助けを借りて平成20年2月23日に"The JSPS Hematology Workshop in Fukuoka:Thrombosis and Thalassemia in Asia"を開催、日本国内ならびにアジア各国の専門家を交えて研究会を行いその事実を確認することができた(The Proceedings of JSPS Asian Core Program)。 このような背景の下で、本研究ではProtein C/Protein S機能測定方法の確立と血栓症の発症予防・治療を目的として、Protein S・Protein C凝固阻止活性低下の治療薬の開発を行った。その結果、Protein C/Protein S機能測定方法を確立し、さらに、これまで凝固活性・凝固阻止活性に余り影響がないと思われていた、phosphatidylcholine(PC),phosphatidylethanolamine(PE),lysophosphatidylcholine(LPC)が凝固活性・凝固阻止活性に強い影響を示したことである(Tsuda et. al.:Blood Coagul FibriRolysis 17,453-458(2006);17,465-469(2006))。特に、PEが向凝固活性を阻害し、凝固阻止活性には影響を与えない現象は注目に値することであり、PE-rich liposomeが深部静脈血栓症発症初期の患者の治療薬開発実験を行っているところである。
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