目的;一酸化窒素合成酵素(NOS)遺伝子多型(T^<-786>C遺伝子多型)の動脈硬化症発症への関与が指摘されながら、動脈硬化症予防に関する介入研究は見られない。そこで、動脈硬化症予防に関するNOS遺伝子多型を考慮した職域集団における介入研究を実施し、より有効な動脈硬化予防プログラムを開発することを本研究の目的としている。 対象と方法;大動脈脈波伝播速度の測定により、軽度の動脈硬化有りと判定された対象者を2年間の累積で44名選んだ。対象者を情報提供期間(弱い介入)と介入期間(強い介入)において改善傾向を解析した。情報提供期間・介入期間はそれぞれ3ヶ月間(12週間)とし、介入方法として1回/週の動脈硬化症に関する学習と運動療法を中心とした動脈硬化予防プログラムを実施した。また、遺伝子多型の同定に関しては、介入開始時の検査での残存採血血液を用いて行った。 結果と考察;対象者を-786Cアレル保有群と-786Cアレル非保有群に分けて情報提供と介入の効果を比較検討したが、大動脈脈波伝播速度の変化に関する効果は両群ともに情報提供(弱い介入)では有意な改善は見られなかったが、介入(強い介入)により-786Cアレル非保有群でのみ有意な改善傾向が認められた。-786Cアレル保有者では介入による大動脈脈波伝播速度改善効果が低い可能性が示唆された。
|