研究概要 |
運動、特に習慣的運動は健康保持増進に必須であるが、その理由を分子レベルで解析した研究はほとんどない。運動により各種臓器や筋骨格系に負荷がかかるが、必ず負荷がかかる臓器に肺がある。しかし運動が肺にどのような分子変化を誘発するかについては、全くデータがない。本研究では、習慣的な運動が肺の分子にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的としている。 本年度は、運動が肺の自然免疫系分子に及ぼす影響を検討する目的で、習慣的な水泳運動がラット肺の自然免疫関連遺伝子の発現に及ぼす影響を検討した。Wisterラットを2群に分け、1群には10週間、週5回の水泳運動を負荷した。他群は非運動群とした。両群のラットから肺を採取し、液体窒素で凍結し、-80℃で保存した。肺からmRNAを抽出し、Real Time PCRで遺伝子発現を解析した。自然免疫において病原体認識に働くToll Like Receptor (TLR)2,3,4,9、殺菌に関与するNOや活性酸素を産生するiNOS, eNOS, p47、これらの活性種から生体を保護するSOD1,SOD2,catalase, GPx, HO-1、活性酸素による損傷を修復するOGG1を解析遺伝子とした。House keeping geneとしてはβ-actinあるいはβ2-microglobulinを用いた。また習慣的運動が遺伝子発現に及ぼす影響を網羅的に検討するため、肺のDNA array解析も行った。 その結果、Real Time PCRで解析遺伝子の肺での発現を確認できた。習慣的運動により、TLR4の発現が増加傾向を示したが、他の遺伝子には顕著な発現変動を認めなかった。肺でのTLR9の発現は非常に少なかった。DNA Array解析では、運動によるP21の増加やEIIHの発現低下が示唆され、Real Time PCRでもその変化を確認できた。
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