研究課題/領域番号 |
18390184
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
相澤 好治 北里大学, 医学部, 教授 (10124926)
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研究分担者 |
角田 正史 北里大学, 医学部, 助教授 (00271221)
工藤 雄一朗 北里大学, 医学部, 講師 (60348505)
三木 猛生 北里大学, 医学部, 助手 (00327397)
山内 博 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (90081661)
小谷 誠 東京電機大学, 工学部, 教授 (60057205)
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キーワード | 石綿代替繊維 / リフラクトリーファイバー / 細胞磁界測定法 / 緩和 / 細胞骨格 / マクロファージ様培養細胞 |
研究概要 |
【はじめに】人造繊維状物質の一種であるリフラクトリーファイバー(Refractory Fiber(以下RF))は耐火性、耐熱性等に優れているため、産業廃棄物用高炉や工業炉に石綿代替繊維の一つとして使用されている。本研究では三種のRF(RF1、RF2、RF3)の安全性を検討するために、マウス由来腹腔マクロファージ様培養細胞株RAW264.7を用いて、細胞磁界測定法、LDH酵素測定法、および電子顕微鏡による形態学的観察により細胞毒性評価を行った。【方法】DMEM溶液で前培養したRAW264.7細胞に、細胞磁界測定の指標としてFe_3O_4を添加し、実験群にはRF1、2、3を各250、500,1000μg/mlとなるように添加し、コントロール群にはPBSを添加した(細胞数25×10^4個/ml、液量1ml、各群n=6)。48時間培養後、細胞磁界測定では細胞磁界測定装置にて外部より磁化を行った。その後、磁化中止後20分間の残留磁界をフラックスゲート磁束計にて測定した。LDH酵素測定法では培養液の上清を回収し、マイクロプレートリーダーを用いてRAW264.7細胞から培養液中へのLDH逸脱量を求めた。電子顕微鏡による形態学的観察では、走査型および透過型電子顕微鏡を用いて、核、細胞小器官、細胞膜の観察を行った。群毎に平均値を算出し一元配置分散分析で比較した。【結果・考察】細胞磁界測定では、RF添加により緩和の遅延が認められ、Control群と比較して、RF1では500μg/ml(p<0.05)、1000μg/ml(p<0.001)、RF2では1000μg/ml(p<0.05)、RF3では1000μg/ml(p<0.001)の添加群において有意に遅延した。LDH酵素測定においても、RF添加による培養液中へのLDHの逸脱が認められた。Control群と比較して、RF1では500μg/ml以上(p<0.001)、RF2では250μg/ml(p<0.05)、500μg/ml(p<0.05)、1000μg/ml(p<0.001)、RF3では500μg/ml(p<0.05)、1000μg/ml(p<0.001)の添加群においてLDHが有意に逸脱した。また、細胞磁界測定及びLDH酵素測定において、RF添加量と細胞毒性の問には量影響関係が認められた。形態学的観察においては、走査型電子顕微鏡では、RF1、2、3ともにRAW264.7細胞が繊維を不完全に貪食し、微絨毛が減少している像が観察された。透過型電子顕微鏡ではRF1、2、3ともに微絨毛の減少、核のクロマチンの凝集が観察された。また、細胞質内に繊維が観察されたものの、比較的細胞小器官は保たれている様子が観察された。今回の実験において、細胞磁界測定法による緩和の遅延より細胞機能への障害性、LDH酵素測定法によるLDH逸脱量より細胞膜の傷害性、形態学的観察より形態学的変化から、RFによるRAW264.7細胞への細胞毒性が示唆された。緩和の遅延は、RF繊維により細胞骨格が障害されたために起こったと考えられる。また、RF1がRF2、3より毒性が強かった理由として、RF1はRF2、3に比べ、1μg当りの繊維数が多いこと、長径が長く短径が短いことが関与していると考えられる。【結論】今回の結果よりRFは濃度依存的な細胞毒性が認められ、濃度が高くなるにつれ石綿と同様の危険性が生じると考えられる。今後は、肺磁界測定法にて更にRFの有害性評価を進める必要があると考えられる。
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