研究概要 |
大気中のナノメーターサイズの粒子に感受性の高い疾患である「アレルギー性気管支喘息」、「感染性肺傷害」、「凝固・線溶系異常」に種々のナノマテリアルの経気道曝露が与える影響を、重点的に解明することを目的とした。特に、今年度は、ナノマテリアルが感染性肺傷害に及ぼす影響とメカニズムの解明に関する研究を重点的に進め、組成の異なる種々のナノマテリアルを複数のサイズで用意し、検討対象物質とした。また、ナノマテリアル単独曝露群も設定し、ナノマテリアルそのものが肺傷害に及ぼす影響も検討した。具体的には、ICR系雄性マウスに下記の実験群を設定し、経気道曝露(気管内投与)を施行した。ナノマテリアルはカーボンナノ粒子、二酸化チタン、酸化亜鉛、等を使用した。1.vehicle曝露群2.ナノマテグアノ曝露群3.細菌毒素曝露群(lipopolysaccharide:LPS)4.ナノマテリアル+細菌毒素併用曝露群 経気道曝露の24時間後に、諸検討を施行した。 総じて、ナノマテリアルの単独曝露では肺における炎症は軽微であった。LPSにより明らかな好中球性炎症が惹起されたが、ナノマテリアルの併用曝露はこれを顕著に増悪した。肺の炎症や水腫の指標である肺水分量もほぼ同様の結果を示した。また、この効果は、肺組織における炎症性サイトカイン(IL-1β,等)、ケモカイン(KC,MIP-1α,MIP-2,等)の発現とよく並行していた。一般に、小さな粒子が大きな増悪影響を発揮する傾向にあったが、必ずしも粒径との逆相関は見られなかった。
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