研究概要 |
(1)免疫・アレルギー、呼吸器、循環器、粘膜系とそれらに関連する疾患モデルに、ナノマテリアルの曝露が及ぼす健康影響を明らかにする。特に、大気中のナノメーターサイズの粒子に感受性の高い疾患である「アレルギー性気管支喘息」、「感染性肺傷害」、「凝固・線溶系異常」に種々のナノマテリアルの経気道曝露が与える影響を、重点的に解明する。(2)ナノマテリアルのサイズ、形状、組成と、健康影響の種別や強度との相関性について明らかにする。さらに、(3)病態増悪のメカニズムを分子レベルで体系的に解明し、ヒトにおける健康影響評価に外挿する。特に、今年度は、ナノマテリアルが血液凝固系の異常に及ぼす影響とメカニズムの解明に関する研究を推進した。ナノマテリアル単独曝露群も設定し、ナノマテリアルそのものが血液凝固系に及ぼす影響も検討した。ICR系雄性マウスに下記の実験群を設定し、経気道曝露(気管内投与)を施行した。 1.vehicle曝露群(0.05% Tween 80,0.25%DMSO加リン酸緩衝液(pH:7.4)) 2.ナノマテリアル曝露群(125μg/bodyを最大量とし、少量曝露群を設定) 3.細菌毒素曝露群(lipopolysaccharide:LPS:75μg/bodyを最大量とし、少量曝露群を設定) 4.ナノマテリアル+細菌毒素併用曝露群 経気道曝露の24-72時間後に、以下の検討を開始した。 (1)血液凝固に関連するパラメータ(PT,APTT,fibrinoge,vWF,等)、(2)血小板を含む血球数、(3)線溶系に関連するパラメータ(FDP,等)、(4)気管支肺胞洗浄液中の総細胞数と好中球をはじめとする各種炎症細胞の浸出数、(5)肺、肝、腎の組織学的所見、(6)肺水腫や炎症性傷害の指標として臓器水分量、(7)組織の遠心上清に含まれる炎症性サイトカイン(IL-1β,TNF-α,IL-6,等)、ケモカイン(KC,MIP-1α,MIP-2,等)の濃度(ELISA)ナノマテリアルは細菌毒素による血液凝固異常、組織傷害、炎症性変化を顕著に増悪した。単独影響は強くなかった。増悪影響には炎症性サイトカインやケモカインの産生更新が重要な役割を演じていると考えられた。
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