研究概要 |
1.腸型胃癌とびまん性胃癌のそれぞれについて、放射線被曝とIL-10ハプロタイプ(二つの主要ハプロタイプ対立遺伝子ATTA[野生型]とGGCG[変異型])の組み合わせによる胃がんリスクを検討した。多変量解析により、他の交絡因子を考慮して解析しても、放射線被曝はびまん性胃癌の胃がんリスク増加に関与するが、腸型胃癌のリスクには有意な関連を示さないことが見出された。腸型胃癌では、IL-10ハプロタイプによって非被爆者の胃がんリスクが大きく異なっていたが、それぞれのハプロタイプのがんリスクに放射線被曝は大きく影響していなかった。これに対して、びまん性胃癌では、放射線被曝によるリスクの増加は特にATTA/ATTAについて著しかった。その結果、高線量の放射線に被曝しGGCG/GGCGを持つ対象者では胃がんのリスクが最も高かったが、IL-10ハプロタイプによるリスクの差異は減少した。以上の結果から、過去の放射線被曝とびまん性胃癌の胃がんリスクに関連が見られた。一方、腸型胃癌では、有意な関連は見られなかった。また、びまん性胃癌では、IL-10のハプロタイプと放射線の強い相互作用が観察された。 2.肝がん90症例と対照群1846名について、放射線被曝および炎症関連遺伝子多型(IL1B,IL6,IL10,IL18,TNFおよびIFNG)と肝発がんリスクの関係を検討した。対象者を被曝線量によって3群に分けた時、最も高い線量群(≧0.7Gy)のIL-10-GGCGをホモ接合体として持つ原爆被爆者の肝発がんリスクは大きく増加していた(OR=3.43,95%CI:1.24-9.45)。 3.胃および肝がんリスクは原爆放射線量に伴い有意に増加し、IL-10ハプロタイプにより大きく影響を受けていることから、特に放射線に被曝した時、これらのがんのリスクが高い人々を同定することが可能になると考えられた。
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