1.アルコールの細胞内情報伝達系について、今までNF-kappaBを中心とする生体防御系に着目して解析を行ってきた。その中で、IAPの誘導とAktの活性化が明らかになった。またIRF3の活性化も認められ、新たな作用点の可能性が示唆された。 2.非アルコール性肝障害マウスモデルにおいて、アルコールを投与すると急性投与に認められる炎症系の活性化が認められず、生体防御因子の一つであるNF-κB活性が抑制していることが示され、防御システムが破綻していることが明らかとなり、また不飽和脂肪酸が炎症の惹起に関与していることを明らかにした。 3.アルコール性突然死ラットモデルを確立した。このモデルはLPS投与の後アルコールを投与するモデルである。LPSによって活性化することが知られているtoll-like receptor 4系の自然免疫系シグナルが関与すると思われたが、当初の予想に反し、自然免疫系のシグナルは関与していないことが判明した。現在はあるタンパクに着目して解析を続行している。 4.脳挫傷モデルを作成して、アルコールの及ぼす影響について解析したところ、アルコール投与は脳挫傷後の脳浮腫を悪化することが明らかになった。その機序について、免疫系のシグナルを解したが、特に活性化しているサイトカインや転写制御因子はなく、むしろ生体防御系の転写制御因子の活性が低下することが判明した。それに伴って浮腫の悪化が認められることから、アルコールは生体防御系を低下させることによって予後不良となることが示された。また、脳挫傷後3時間で抗酸化剤を投与することで死亡率や脳浮腫を軽減させることを示し、今後の治療への応用が期待される。 5.アルコール等特発性大腿骨頭壊死モデルを世界で初めて確立した。この大腿骨頭壊死にTLR4シグナリングが関与していることを初めて明らかにし、治療を含めた今後の展開が期待される。
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