法医学において剖検試料から薬毒物をスクリーニングすることは重要な項目である。血液、尿を試料とする臨床中毒分野とは異なり、体組織試料を対象とすることが度々ある。薬毒物分析の対象となる薬物は範囲が広く、数種の試料処理、数種の分析条件を行うのが現状である。本研究では、ガスクロマトグラフィー・質量分析法の測定に限って、数種の広範囲分析をできるだけ連続的に高速化して、現状ではルーチンでない体組織試料分析法を開発していく。本年度は、体組織試料分析のための試料調製の問題点、高速GG-MS分析のための試料調製ならびに試料導入法について基礎的な検討を行った。1.ナローボアキャピラリーカラムを低圧で操作し、高速化の試験的研究(九州厚生局の藤井広志氏の協力)、2.ナローボアキャピラリーカラムを体組織試料分析に効果的に用いるため、試料導入システムの検討(島津製作所の宮川治彦氏の協力)、3.実務試料分析に関する基礎的検討(中国医科大学の劉俊亭教授の協力)の3項目を主に行った。1においては、スプリット試料導入での高速化が可能であるという結果が得られ、現在、ナローボアキャピラリーカラムの高圧操作を検討している。2については、当初計画していたPTV(program-temperature ventilator)での試料濃縮が困難であることがわかったが、2連式カラムによるリテンションギャップで対象物の濃縮が効果的であるという知見が得られ、ナローボアキャピラリーカラムへの応用を検討していくことになった。3については、多くの実務的な情報と、その分析の試みで研究を進めている。オリジナルの研究としては、体組織試料からの薬物一斉抽出・精製法をアセトニトリル抽出・ヘキサン洗浄で検討しており、血液・尿試料に使用されている固相抽出に相当する効果が伺われ、詳細な研究を行っている。来年度以降は2の研究を具体的に重点的に行い、体組織試料のGC-MS分析の高速化を進める。
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