法医剖検における薬毒物検査は対象となる薬毒物の種類は多く、本研究の目的は、できるだけ多くの種類の薬毒物を一斉にGC-MSで分析する方法を開発するところにある。本年度は、昨年度に引き続き、数種の試料調製を簡素化し、GC-MS測定を高速化し、連続して測定できる行程を検討した。具体的には、1.体組織試料の試料処理の検討(低コストでできる数種の方法を検討)、2.ナローボアキャピラリーカラムを使ったGC-MS測定の高速化の検討(体組織試料分析のための試料注入条件の検討)、3.2つのカラムを使った連続分析の検討、4.研究成果の実用化に向けての準備を行った。成果については項目ごとに示す。1.数種の実務レベルに確立された試料処理法に加え、塩基性薬物・酸性薬物・極性薬物それぞれの試料処理を簡素化し、実務試料に検討するところまで進んだ。2.現在の装置に適したカラムの選択を行った。現時点では内径0.18mm、長さ10mの高温対応カラムを主カラムとして選択した。高速測定にはピークの濃縮が必要であるようであったので、主カラムと注入部[インサート]との間に膜厚が比較的厚く、内径の厚い短いキャピラリーカラムを採用した。不活性のガードカラムなどを利用しているリテンションギャップ(従来法)に比べ、極性の高い物質のピーク形状が改善された。また、従来の10〜15分間(速い方)の測定時間を5分以内で行うことができるようになった。3.装置の機能上、2つのカラムを自動的に交互に連続使用することは不可能である。揮発性物質、光学異性体などの測定以外は、同じカラムで測定できるようになった。4.高沸点の薬物には、これまでの研究で求めた条件で測定できないものがあり、より一層の測定の高速化が必要であることもわかり、研究成果の実用化に向けて詳細な検討を行っている。
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