研究概要 |
本年度は、(1)急性ストレスによるIL18の分泌機構の解明、(2)実験的ストレス負荷野生型マウスにおける、サイトカイン類の分泌パターンの解明、(3)サイトカインの網羅的測定のためのアレーシステムの選定と改良、(4)IL18の、視床下部-下垂体-副腎系に対する作用機序の解明、(5)ストレス関連疾患患者におけるIL18血中レベルの変化の解明、が主な成果であった,具体的には、(1)では、急性拘束ストレスが、NADPHオキシダーゼを介してカスパーゼ1を活性化、IL18の分泌に至ることを明らかにし、さらに誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)が発生する一酸化窒素によって副腎カスパーゼ1中のシステインのS-ニトロシレーションが起き、ストレス下でのカスパーゼ1活性に対して抑制的に作用することを明らかにした。生体内のラジカルが一次的な構造のままでストレス応答に関与しているメカニズムを世界で初めて明らかにした。(2)では、ストレスによりIL18以外にも数多くのサイトカインが誘導されることを示し、ストレス応答の当初の定義である、汎適応症候群という概念が、サイトカインには当てはまらないことを示した。(3)では、市販のアレーシステムをプロトコールを含めて検討、再現性、正確性の高い測定法を確立した。(4)では、IL18の急性ストレス応答時に血中分泌されたIL18がさらに中枢神経系に作用し、血中ACTHレベルの持続的上昇を維持することを明らかにした。ストレスによって内分泌系の負荷が増大していくメカニズムの一つとして注目されつつある(米生物学的精神医学会発表済)。(5)では大うつ病、統合失調症患者において血中IL18レベルを測定。既報のあったIL1b,IL6と比較、結果、IL18は病態よりもむしろ精神的ストレスに、非特異的に反応している可能性が示された(米生物学的精神医学会2007発表済。論文投稿準備中)。
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