空腸粘膜材料および回腸粘膜材料から分離した陰窩およびパネート細胞のデフェンシン発現解析を行った。小腸粘膜から陰窩を分離し、real-time PCR法で単離小腸陰窩レベルにおけるcryptdin isoform mRNA発現定量解析を施行して、すべてのcryptdin isoform(cryptdi-1〜cryptdin-6)についてのmRNA発現を定量した。Cryptdin-4遺伝子発現が回腸陰窩に比較して少ないものの空腸陰窩にも認められることを示した。小腸の自然免疫に貢献していると考えられるcryptdin遺伝子発現には、空間的発現制御がはたらいていることが示唆された。また、共焦点レーザー顕微鏡下に抗cryptdin抗体を用いた免疫蛍光染色法を施行し、単離小腸陰窩レベルおよび単離パネート細胞レベルにおいて、パネート細胞デフェンシンの細胞内顆粒における三次元的免疫局在を明らかにした。次に、パネート細胞特異的な蛋白・ペプチド発現を明らかにするため、マウス小腸粘膜材料から研究代表者らの既報に準じた方法により、パネート細胞分泌物から抽出した蛋白質をAcid Urea-PAGEで分離した。最後に、パネート細胞分泌物に対する化学遊走能解析を施行した。小腸陰窩をS.typhimuriumに曝露して37℃で30分反応後上清としてパネート細胞分泌物を採取した。全血から比重遠心法でリンパ球および単球を得た。得られた単球からさらに未熟樹状細胞と成熟樹状細胞を調製した。ケモタキシスチャンバーを用いて、分泌物を含むパネート細胞由来物質等に対する成熟樹状細胞および未熟樹状細胞の化学遊走性を解析した。パネート細胞分泌物が未熟樹状細胞に対してケモアトラクタントとしてはたらくことを示した。これにより、パネート細胞由来物質が腸管局所の炎症制御に直接関与している可能性が示唆された。
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