研究概要 |
小腸からEDTA分離法を用いたわれわれの既報(Ayabe T, et al.,Nature Immunol 2000)により小腸陰窩を単離し、パネト細胞に発現している自然免疫関連エフェクター遺伝子発現を定量的に解析して、αディフェンシン遺伝子発現および関連遺伝子発現に小腸空間的制御機構があることを示した。さらに、得られた小腸陰窩分画からcollagenase分離法に準じて単一細胞まで細胞を分離し、小腸上皮細胞分画を得た。次に、パネト細胞αディフェンシンおよびパネト細胞分泌物による化学遊走能を解析した。マウス小腸粘膜材料から上記の方法で単離した小腸陰窩を、細菌曝露して37℃で30分反応させた上清を回収した。回収したパネト細胞分泌物より抽出したペプチド・蛋白質を電気泳動法で分離した。全血から比重遠心法でリンパ球および単球を得た。既報に準じて得られた単球からさらに未熟樹状細胞を調製した。ケモタキシスチャンバーを用いて、パネト細胞αディフェンシンおよびパネト細胞分泌物に対する未熟樹状細胞の化学遊走性を解析した。さらに、培養大腸癌細胞株T84細胞をパネト細胞分泌物で刺激して上清を回収し、IL-8およびTNF-αなどの炎症性サイトカイン分泌についてELISA法で解析した。パネト細胞αディフェンシンは未熟樹状細胞に対して化学遊走因子として作用することが示された.パネト細胞分泌物およびパネト細胞αディフェンシンはT84細胞からのIL-8分泌を刺激した。さらに、パネト細胞分泌物はT84細胞からのTNF-α分泌を生じさせた。これらの結果より、感染刺激に反応してαディフェンシンを分泌するパネト細胞は、未熟樹状細胞に対する誘導活性を有し,さらにIL-8,TNF-α等のサイトカイン分泌を生じさせることにより、獲得免疫の発動に関与している可能性が示された。
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