研究分担者 |
武藤 弘行 自治医科大学, 医学部, 講師 (50322392)
佐藤 貴一 自治医科大学, 医学部, 講師 (50275707)
大西 洋英 自治医科大学, 医学部, 講師 (00313023)
大澤 博之 自治医科大学, 医学部, 講師 (70260833)
吉澤 充代 自治医科大学, 医学部, 助教 (80406074)
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研究概要 |
胃粘膜が腸型上皮に転換する腸上皮化生には転写因子CDX2が深く関与していることを報告してきた。しかし,一旦形成された腸上皮化生を正常の胃粘膜形質に復帰させることはこれまで困難であった。本研究では,胃粘膜形質の維持に重要な働きをしているSonic Hedgehog(SHH)と腸上皮化生との関係,SHHの発現を抑制するHedgehog Interacting Protein(HIP)の発現,SilencingRNA(siRNA)によるCDX2発現の制御の可能性等について検討することを目的とした。われわれの作成したCDX2発現モデルマウスでは,SHHの発現は壁細胞マーカーであるH,K-ATPaseの発現とよく一致しており,腸上皮化生が組織学的に認められる前にともに減少していくことが明らかとなった。この際にCDX1の発現が遅れて認められること,さらにHedgehogと関連するBMP4の発現やFrizzled,Wntシグナリングとの複雑な関連性が認められることがこのモデル系の解析から明らかになってきている。さらに,CDX-2によるNF-κBの活性化抑制機構が解除することが、大腸がんの発生に関与している可能性を論文発表した。一方HIPを壁細胞に強制発現するという我々が計画した研究と同じ内容の研究が米国のMichigan大学のグループにより米国消化器病学会で報告された。それによるとHIPの発現に伴ってこのマウスでは酸分泌能が低下し壁細胞の数が低下するものの,必ずしも腸上皮化生形成が見られなかったという。これは現時点ではまだ論文としては未発表であるが,HIP発現によるSHHの制御のみでは,必ずしも腸上化生の十分条件ではないこともあり,追試的研究に終わる可能性があるためHIP関連の検討は行わなかった。siRNAに関しては昨年度よりさらに3種類の合成RNAを追加して,CDX2発現培養細胞にトランスフェクトし,CDX2の発現抑制が認められるかをウエスタンブロットで検討したが,残念ながらいいずれも十分な効果が得られなかった。このため,現在はrentivirusベクターを用いて恒常的に発現させることにより,ノツクダウンが可能かどうかをさらに検討している。このように腸上皮化生をCDX-2の発現抑制によって解除する試みは今のところ成果があがっていないが,この試みと並行して,最近分化制御,腫瘍発生などさまざまな細胞機能に重要な働きをしていることが明らかにされているmiRNA発現プロファイリングをAgilent社のExpression Arrayを用いて腸上皮化生モデルマウス系で検討した。現在解析を行っているところであるが,興味深いことに,腸上皮化生粘膜で胃型ではなく,小腸上皮と関連するmiRNA発現プロファイルの変化が認められるとともに,腫瘍発生に伴ってこれらのmiRNA発現プロファイルが変化することがわかった。今後定量的測定等を行ってその変化を確認するとともに,これらが腸型形質発現にどのように関与しているのか検討を進めていく予定である。
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