研究課題
基盤研究(B)
血管石灰化は、高齢者、糖尿病や腎不全患者で高率に認められ、内膜石灰化と中膜石灰化に大別される。また、弾性動脈や筋性動脈のどちらの石灰化も心血管イベントの発症を増加させる。これまで、石灰化は壊死過程の血管細胞にカルシウムが受動的に流入する動脈硬化の終末像として考えられてきたが、1990年にUCLAのBostromらが石灰化病変にBMP2(bone morphometric protein 2)の発現を示して以来、能動的なプロセスの存在が想定されてきた。しかしながら、血管石灰化の詳細なメカニズムについては不明である。そこで、本研究では、血管石灰化の分子機構を解析した。まず、私たちはCbfa1/Runx2が動脈硬化病変に発現し、平滑筋α-actinの発現とは相反する分布を示すことや、Cbfa1/Runx2がmyocardinの機能を抑制し、血管平滑筋細胞の分化を抑制すること、骨芽細胞特異的な遺伝子発現を増強し、ミネラル蓄積を促進すること、Notchの活性化は骨芽細胞への分化に重要な遺伝子Msx2の発現を増加させることが明らかにした。続いて、糖尿病や腎不全患者の血中に高レベルで存在するAGE(Advanced Glycation End-product)が血管石灰化を促進するか否かについて研究を進めた。AGEは受容体RAGE(Receptor for AGE)を介して細胞内情報伝達系を活性化することが知られていることから、RAGEを培養血管平滑筋細胞に強制発現し、AGEにて刺激をした。その結果、血管平滑筋細胞はアルカリホスファターゼや他の骨芽細胞特異的因子が陽性の骨芽細胞に変換した。また、そのメカニズムを解析した結果、RAGEの活性化はNotchシグナルを活性化することが明らかになった。RAGEシグナルとNotchシグナルが密接に相互作用することは世界に先駆けての発見であり、独創的な研究である。
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