研究概要 |
1.Cre-変異loxによるリコンビナーゼ依存性遺伝子交換を用いて,マウスエンドセリンA型受容体(ETAR)遺伝子座への系統的遺伝子ノックインシステムを確立し,以下の結果を得た. (1)lacZ遺伝子ノックインによりETAR発現細胞を可視化し,その発現がin situハイブリダイゼーションによるETAR mRNAの発現パターンとほぼ一致することを確認した。この系により、頭部神経堤細胞のほか,中胚葉由来間葉細胞,心筋細胞,血管細胞などにノックイン遺伝子が発現し機能しうることを明らかにした。 (2)ETAR cDNAのノックインでは表現型が完全に正常化するのに対し,ETBR(エンドセリンB型受容体)では部分的にしか正常化しないことから,発生期における生理的なリガンド-受容体反応においては,2つのエンドセリン受容体が異なるシグナル伝達経路を活性化すること、ETAR下流シグナルとしてはサブタイプ特異的経路とサブタイプ共通の経路が存在し、頭頚部の発生領域によって使い分けられていることが明らかになった. 2.lacZ遺伝子ノックインマウスの解析から,心発生初期段階でのETAR発現細胞が特異な分布をすることを見いだし、心形成過程での動態を蛍光色素標識によって明らかにした。この結果は,心発生に関与する新しい細胞群の同定につながる可能性がある. 3.ET-1/ETARシグナルの下流遺伝子として,カルパイン6を同定し,この分子が微小管安定化作用を介して細胞の運動性や形態を制御していること、その経路にAktが関与していることを明らかにした.カルパイン6のlacZノックインマウスを作成し,その発現が主に胎生期の神経堤.中胚葉由来組織に認められることを明らかにした.現在,表現型を解析中である.
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