研究概要 |
遺伝子改変マウスの樹立と解析により、心血管発生や病態形成におけるエンドセリン(ET)システム関与のメカニズムに関して以下の成果を得た。 1.Cre-変異10x系による遺伝子カセット交換の導入により、ES細胞でエンドセリンA型受容体(ETAR)遺伝子に系統的なノックインを行うシステムを確立した。 2.1のシステムによりETB受容体、ETAR-ETBRキメラ受容体のノックインを行い、顎顔面発生においてETAR選択的およびETAR,ETBR非選択的シグナルの両方が異なる発生過程に関与していること、鰓弓形成におけるホメオボックス遺伝子Dlx5/6の発現誘導と下顎領域のアイデンティティーの決定は前者によるGq/G11活性を介したものであることを明らかにした。 3.LacZ,EGFPのノックインにより、心発生初期から認められるETAR陽性細胞の一部が心臓形成に寄与する新たな細胞系譜を示す可能性があることを明らかにした。 4.EGFPノックインマウスにおいてETAR陽性細胞が可視化でき、血管新生や病態形成過程における平滑筋細胞などの動態解析に有用であることを示した。 5.発生期におけるET1/ETARシグナルの下流分子として同定したカルパイン6が、微小管安定化やアクチン骨格の調節を介して、細胞の形態や運動の制御に役割を果たしていることを明らかにし、ETシグナルの発生学的役割との関連について解析を行った。 これらの成果により、心血管および顎顔面の発生メカニズムの解明に貢献するとともに、ETシグナルが関わる病態の解析に広く応用可能な実験系を確立することができた。
|